オオクワガタ飼育を始めよう!
オオクワガタの産卵方法【初心者必見】 基本的な方法から産卵確率アップのコツまで分かりやすく解説。
オオクワガタの産卵についての基礎知識
オオクワガタは産卵木に卵を産む『材産みタイプ』
オオクワガタはクヌギやコナラなどの朽ち木の中に産卵をします。一般的に『材産みタイプ』といわれる種類です。そのためオオクワガタを産卵させるためには『産卵木(さんらんぼく)』とよばれる産卵用の材が必要になります。
オオクワガタを産卵させるには成熟したオスとメスを交尾させる必要がある
一般的に販売されているオオクワガタは未交尾になります。そのため産卵させる前にオスとメスを交尾させる必要があります。これを『ペアリング』といいます。ペアリングさせる時に重要なのがオスとメスが成熟しているかどうかです。成熟とは『交尾・産卵が可能な状態』のことを指します。
オオクワガタの場合は羽化(成虫になる)してから約4ヶ月~6ヶ月経てば十分成熟します。成熟するまでの期間は飼育温度や個体差によって差が出ることがあります。
オス・メスが十分に成熟していない場合、交尾・産卵が上手くいかなかったり、産卵したとしても無精卵で幼虫に孵化しなかったりする恐れがあります。
オオクワガタを産卵させるには季節(温度)が大切
もう1つオオクワガタの産卵に欠かせないのが『温度』です。20℃~25℃くらいの安定した暖かい温度(理想は25℃前後)が必要になります。季節としては初夏~夏が産卵のベストシーズンです。秋を過ぎると冬眠の準備に入ってしまい、そうなるとたとえ温度管理しても産卵は難しくなります。
そのため時期としては気温にもよりますが5月~9月上旬くらいまでになるでしょう。
オオクワガタを産卵させるまでの流れ
次にオオクワガタを産卵させるまでの流れをみていきましょう。産卵までの流れは次のようになります。1、オスとメスをペアリング(交尾)させる【3~4日】
2、産卵セットを組む
3、交尾済みのメスを産卵セットに投入して様子をみる【約1ヶ月】
4、産卵の兆候がみられたらメスを取り出しさらに様子をみる【約1ヶ月】
5、産卵木を割り出して幼虫を取り出す
1、オスとメスをペアリング(交尾)させる【3~4日】
成熟したオオクワガタのオスとメスをペアリングさせます。オオクワガタの場合は羽化から約4ヶ月~6ヶ月経てば成熟済みと考えて大丈夫です。簡単な方法としてはオス・メスを数日間同じケースで同居させます。オオクワガタは警戒心も強く、交尾は人気のない夜間におこなうことが多いため実際に目視で確認するのは難しいです。3~4日ほど一緒にさせればまず交尾していますので、確認できなくても交尾済みと判断します。ペアリングを成功させるポイントは次のとおりです。
■飼育ケースは小さめのものを使う。
■マット(土)は潜って隠れないくらいの浅めに敷く。
■エサ場は1ヶ所だけにする。
できるだけオスとメスが出会いやすくなるようにしてあげましょう。
オオクワガタはおとなしい性格ですが稀にオスがメスを殺してしまうことがあります。一緒のケースに入れたらオスがすぐにメスを攻撃しないか少し様子をみてください。
【↓ペアリングのやり方を動画でもご紹介しています】
※動画は音声が流れます。
2、産卵セットを組む
ただ単にオスとメスを一緒に飼育していても産卵はしません。産卵させるにはオオクワガタのメスが産卵できる環境をつくってあげる必要があります。産卵セットとは『メスが産卵したいと思う環境』を飼育ケースの中に再現したものです。オオクワガタの場合は材産みタイプなので産卵木を使って産卵セットを組みます。
(産卵セットの具体的な組み方は下記で詳しく紹介しています)
3、交尾済みのメスを産卵セットに投入して様子をみる【約1ヶ月】
産卵セットを組んだらそこに交尾済みのメスを投入します。オスも一緒に入れてしまうと産卵の邪魔になることがありますので、産卵セットにはメスだけ入れるのがポイントです。あとは直射日光の当たらない静かな場所に置いて様子をみます。メスや産卵木の様子が気になるところですが、ここで産卵セットを動かすのはNGです(ゼリーの交換くらいはOK)。少なくとも約1ヶ月は産卵木には触れずに様子をみましょう。
4、産卵の兆候がみられたらメスを取り出しさらに様子をみる【約1ヶ月】
メスが産卵行動にはいると産卵木を削ったり穴をあけて穿孔したりします。ケースの外からみて産卵木がかなり削られている様子が確認できれば産卵している可能性が高いです。メスを投入して1ヶ月近く経ち産卵木が削られているようでしたら、メスが外に出ているときに取り出しましょう。
そこからさらに約1ヶ月ほど様子をみます。産卵した卵が孵化して幼虫がある程度成長するのを待つためです。
産卵の兆候がみられたからといってすぐに産卵木を割ると卵が出てくる恐れがあります。産卵木の中で幼虫に孵化させたほうが安心ですので待ちましょう。また産卵したばかりの産卵木はまだ固いため割り出すのも大変です。
5、産卵木を割り出して幼虫を取り出す
産卵の兆候がみられてから1ヶ月も経てば孵化した幼虫が産卵木の中である程度の大きさまで成長しています。産卵セットから幼虫を取り出すことを『割り出し』といいます。ドライバーなどの工具を使って少しずつ産卵木を割りすすめて中の幼虫を取り出しましょう。
取り出した幼虫は初令ならプリンカップに発酵マットで個別に管理し、2令以降なら菌糸ビンに移します。
※幼虫の大きさ(初令・2令・3令)について詳しくはこちらのページをご参考ください。
ドライバーで幼虫を傷つけないように慎重に割っていきましょう。幼虫は孵化したばかりの小さい初令の場合、菌糸ビンですと死亡率が高くなることがあります。
産卵木についての紹介と産卵セットの組み方について
オオクワガタの産卵には欠かせない産卵木。産卵を成功させるために一番重要なものといえます。オオクワガタの産卵で使用されている産卵木には主に次の2種類があります。
■シイタケのホダ木を利用した一般的な産卵木
■クヌギやコナラなどにキノコ菌を植菌した菌糸材
ここではそれぞれの産卵木についての特徴と産卵セットの組み方について紹介します。
■クヌギやコナラなどにキノコ菌を植菌した菌糸材
クヌギ・コナラなどの一般的な産卵木について
一般的な産卵木とはシイタケの原木栽培で使われたホダ木をオオクワガタの産卵用に短くカットしたものです。なぜシイタケのホダ木が産卵木として使われるのか?
野生のオオクワガタは立ち枯れしたクヌギなどの樹木に産卵します。ただ飼育下で産卵させるのにそういった天然の樹木を使うことは難しいです。
そういったなかでシイタケ菌によって朽ちたホダ木がオオクワガタが産卵に好む状態だったことが分かり、産卵木として利用されるようになりました。
一般的な産卵木のメリット・デメリット
一般的な産卵木(クヌギ・コナラなど)のメリット・デメリットを知っておきましょう。【一般的なクヌギやコナラの産卵木を使うメリット】
■サイズ(太さ)や固さなどが選べ、ケースの大きさに合わせやすい。
■1本あたりの値段が安価。(大体1本300円~600円ほど。値段は太さや品質によります)
■長く保存できるため、使わない産卵木はとっておける。
■サイズ(太さ)や固さなどが選べ、ケースの大きさに合わせやすい。
■1本あたりの値段が安価。(大体1本300円~600円ほど。値段は太さや品質によります)
■長く保存できるため、使わない産卵木はとっておける。
【一般的なクヌギやコナラの産卵木を使うデメリット】
■産卵木の質にばらつきがある。
■加水・陰干しをおこなう必要がある。(難しくはないです)
■雑虫などの混入の可能性がある。
(→ビートルファームの産卵木はA材とよばれる上質で雑虫混入の可能性が低いものを取り扱っています。)
太さを選べるため複数の産卵木をセットしたい場合にケースの大きさに合わせやすいのが便利です。良質なものを使うことが大切なため、産卵木は専門店が扱うものを選ぶのがおすすめです。
■産卵木の質にばらつきがある。
■加水・陰干しをおこなう必要がある。(難しくはないです)
■雑虫などの混入の可能性がある。
(→ビートルファームの産卵木はA材とよばれる上質で雑虫混入の可能性が低いものを取り扱っています。)
一般的な産卵木を使った産卵セットの組み方
オオクワガタを産卵させる場合に最も多く行なわれているセット方法といえます。クヌギ・コナラどちらもオオクワガタが好む産卵木です。
オオクワガタのメスは自分が気に入った産卵木を選びます。どの産卵木を気に入るかはメス次第なため、2~3本の複数の産卵木をセットするのが成功確率をアップに効果的です。
それでは産卵セットの組み方の手順をみていきましょう。
1、産卵木を加水・陰干しします。
使用する産卵木を加水します。加水時間は30分~1時間ほどで、産卵木が十分に水を吸いきっていれば大丈夫です。加水した産卵木は30分ほど陰干ししてください。
2、埋め込みマットを敷いて産卵木を並べます。
飼育ケース(コバエシャッター中)の底に微粒子埋め込みマットを4~5cmほど敷きます。手で押し固めるように敷いてください。その上に産卵木を横向きに並べて置きます。産卵木の皮を剥くかどうかはお好みでお選びください。
当店の産卵木ですと産卵木 Mサイズがちょうどコバエシャッター(中)に3本セットできる太さです。
3、産卵木を埋め込みます。
産卵木の8割~9割くらいが隠れるまで微粒子埋め込みマットで埋めます。この際には押し固めなくて大丈夫です。4、転倒防止材と高タンパクゼリーを配置して完成です。
転倒防止材と高タンパクゼリーをバランスよく配置して完成です。写真にはオスとメスを投入していますが、産卵の邪魔にならないように交尾済みのメスだけ投入するようにしましょう。
あとは産卵してくれるように約1ヶ月は静かに様子を見守ることが大切です。
【↓オオクワの産卵に必要な用品がすべて揃った「クワガタ産卵セット(材産み用)」を使ったセット方法の動画です】
※動画は音声が流れます。
人工カワラ材などの菌糸材について
菌糸材とはクワガタムシの産卵専用に製造された産卵木です。クヌギ材やコナラ材に特定のキノコの菌を植菌・培養してつくられています。オオクワガタの産卵に非常に効果的な菌糸材が人工カワラ材です。オオクワガタがカワラタケ菌を好んで産卵する傾向があるため、そのカワラタケ菌を植菌した産卵用の材になります。
一般的な産卵木ではなかなか産卵しないメスでも産卵に成功したり、多産が期待できたりします。 当店もWF1個体(野外で採集したメスの子)のブリードは全てこの人工カワラ材でおこなっています。
人工カワラ材のメリット・デメリット
人工カワラ材のメリット・デメリットを知っておきましょう。【人工カワラ材を使うメリット】
■オオクワガタの産卵に非常に効果的なため産卵確率がアップする。
■製造過程で滅菌処理されるため雑虫の混入がない。
■水分が含まれているため加水・陰干しの必要がない。
■オオクワガタの産卵に非常に効果的なため産卵確率がアップする。
■製造過程で滅菌処理されるため雑虫の混入がない。
■水分が含まれているため加水・陰干しの必要がない。
【人工カワラ材を使うデメリット】
■サイズ(太さ)や固さが選べない(袋詰めで販売されています)
■1本あたりの価格が一般的な産卵木に比べて高価。(だいたい1袋2本入りで1,500円くらい)
■高温に弱く時間とともに劣化していくため長期保存ができない。
オオクワガタの産卵目的であれば人工カワラ材を使うメリットは非常に大きいです。もちろん必ず産卵してくれるとは限りませんが、一般的な産卵木より確率は高まります。可能であればぜひ使いたいところです。
■サイズ(太さ)や固さが選べない(袋詰めで販売されています)
■1本あたりの価格が一般的な産卵木に比べて高価。(だいたい1袋2本入りで1,500円くらい)
■高温に弱く時間とともに劣化していくため長期保存ができない。
人工カワラ材を使った産卵セットの組み方
オオクワガタの産卵に特に効果的な人工カワラ材を使った産卵セット方法です。人工カワラ材は1袋に2本入りになりますので、2本ともセットするようにしましょう。1、人工カワラ材の皮膜と樹皮を半分だけ剥きます。
人工カワラ材は樹皮のまわりが菌糸の皮膜で覆われているのが特徴です。この皮膜と樹皮を剥くかどうかは一概にどちらが良いとはいえませんので必須ではありません。当店では半分だけ剥いてセットすることが多いです。
※人工カワラ材は加水済みのため、再度の加水・陰干しは必要ありません。
2、ケース底に埋め込みマットを数cmほど敷きます。
飼育ケース(コバエシャッター中)の底に微粒子埋め込みマットを数cmほど手で押し固めるように敷いて霧吹きで少し加水します。3、人工カワラ材を並べて置きます。
皮膜と樹皮を剥いた面を下にして人工カワラ材を並べて置きます。4、埋め込みマットで人工カワラ材を埋めます。
人工カワラ材と飼育ケースの隙間に微粒子埋め込みマットをいれて材を埋め込みます。人工カワラ材の上部が少し外に出るようにします。
5、転倒防止材と高タンパクゼリーを置いて完成です。
転倒防止材と高タンパクゼリーをバランスよく置いて完成です!交尾済みのメスだけ投入し、直射日光の当たらない静かな場所に置いて約1ヶ月ほどはそのまま様子をみましょう。
ビートルファームでも使っているオオクワガタの産卵におすすめの用品
オオクワガタの産卵成功の確率をアップさせるには産卵木などの用品選びが重要になってきます。ここではオオクワガタの産卵に当店でも実際に使っているおすすめの用品を紹介します。
【産卵木(クヌギ/コナラ)】
A材~A’材とよばれる良質な産卵木でオオクワガタの産卵に適しています。当店のブリードでも実際に使用しています。産卵木Mサイズならコバエシャッター(中)に3本セットできるのでおすすめです。
A材~A’材とよばれる良質な産卵木でオオクワガタの産卵に適しています。当店のブリードでも実際に使用しています。産卵木Mサイズならコバエシャッター(中)に3本セットできるのでおすすめです。
【人工カワラ材(2本入り)】
クワガタの産卵専用にカワラタケ菌を植菌して製造された材です。特にオオクワガタの産卵には非常に効果的で、産卵確率・産卵数のアップが期待できます。当店の野外で採集したオオクワガタのブリードは全て人工カワラ材でおこなっています。
クワガタの産卵専用にカワラタケ菌を植菌して製造された材です。特にオオクワガタの産卵には非常に効果的で、産卵確率・産卵数のアップが期待できます。当店の野外で採集したオオクワガタのブリードは全て人工カワラ材でおこなっています。
産卵を成功させるポイント
1.産卵セットする時期を選ぶ
野外のオオクワガタは暖かい季節に活動し、気温の低い冬は越冬のため活動しなくなります。そのため産卵に適した季節はだいたい5月~10月くらいです。(気温によります。)
安定して20℃以上ある時期が理想です。冬季は加温しても基本的に産卵させるのは難しいです。
2.しっかりと成熟したペアで交尾・産卵させる
オオクワガタは羽化してから約4か月~6か月くらい経過してからブリードさせるのが良いです。未成熟のペアでは産卵させることができません。羽化後、一度冬を越したペアは最も産卵に適しています。
3.良質の産卵木を複数本セットする
オオクワガタは自分の気に入った材に産卵する傾向があります。どれを気に入るかは実際にセットしてみないと分かりませんので、良質な産卵木を2~3本セットすると効果的です。
4.産卵セット後は1ヶ月は様子をみる
産卵セットにメスを投入したあと、産卵行動に入っているかなどとても気になりますが、ここで産卵木を取り出してみたりマットを掘ってみたりしますとメスが産卵に集中できなくなってしまいます。
産卵するまでの日数は個体差がありますので、1ヶ月はケース内に触れずに様子をみて下さい。
産卵していなかった場合には・・
セットから1ヶ月以上経過しても産卵の兆候がみられず、また実際に割り出してみても卵や幼虫が確認できなかった場合には産卵の失敗が考えられます。失敗の原因については生き物ですので同じ条件で必ず産卵するとは限らず、はっきりと特定するのは難しいです。
考えられる主な要因と対処方法は下記のとおりです。
■温度が低くまだ産卵の時期に適していない。
→気温が安定して高くなる夏を待ち、もう一度チャレンジする。
■オス・メスのどちらかがまだ十分に成熟していない
→羽化から約4ヶ月~6ヶ月経ってからブリードする。(ひと冬越したペアならベスト)
■しっかりと交尾していない
→もういちどペアリングからやり直す。
■産卵木が合わなかった
→新しい産卵木で再セットする。人工カワラ材を試してみる。
■メスが弱っていた
→高たんぱくゼリーを与えて様子をみる。難しい場合は別のメスでチャレンジする。
オオクワガタに限らずクワガタムシやカブトムシの産卵は必ず成功するとは限りません。そこは生き虫ですので正しい方法でブリードをしても個体により成功するかどうか変わってきます。→気温が安定して高くなる夏を待ち、もう一度チャレンジする。
■オス・メスのどちらかがまだ十分に成熟していない
→羽化から約4ヶ月~6ヶ月経ってからブリードする。(ひと冬越したペアならベスト)
■しっかりと交尾していない
→もういちどペアリングからやり直す。
■産卵木が合わなかった
→新しい産卵木で再セットする。人工カワラ材を試してみる。
■メスが弱っていた
→高たんぱくゼリーを与えて様子をみる。難しい場合は別のメスでチャレンジする。
こちら側でできることは産卵の確率を上げていくということです。
夏の限られた時期しか産卵が難しいオオクワガタですので、どうしても産卵を成功させたいという場合には1ペアだけでブリードするのではなく、複数のペアでブリードさせたり、1回の失敗で諦めずに再セットしてみるのもポイントです。
とはいえ産卵に関していえばオオクワガタ自体は他の種類のクワガタと比べても成功しやすい種類になります。
上手く産卵してくれるかその過程を楽しみながらおこないましょう。
ぜひオオクワガタのブリードにチャレンジしてみてください!